腎移植Q&A

腎移植の可能性

透析(血液透析や腹膜透析)をせずに腎移植を受けられますか?

可能です。透析をしないで腎移植をするというのは最近の流れであり、当院では現在、約4割の方が透析をしないで腎移植を受けています。
透析を経ずに腎移植を行うためにも、腎機能の低下を指摘されたら、早めに腎臓内科を受診することが大切です。

現在75歳ですが、腎移植は受けられますか?

当院では年齢による制限は一切設けておりません。
受診された段階で全身をよく精査した上で問題がなければ腎移植を行っています。腎移植は、透析を受けるよりも生活の制限も少なく、食事の制限などもないので、可能であれば腎移植を受けるのがいいと思います。

糖尿病なのですが、腎移植は受けられますか?

可能です。
日本で透析導入される方の半分以上は糖尿病ですが、糖尿病の方が腎移植をすると、糖尿病の状態が良くなることが多いです。体の中の水分量などが安定して心臓や血管への負担が非常に軽くなりますので、それが結果的に長生きできることにもつながっていると思います。
ただし、移植後も糖尿病の管理をしっかり行うことが大切です。

体重を減らさないと腎移植は受けられませんか?

体重に関しては、腎移植者に対して原則として明確な制限はないのですが、あまりに肥満がひどいと、術後の健康状態に悪影響が出てくることがあり注意が必要です。肥満の方は、受診後、外来で相談しながら可能な限り減量に努めましょう。また、ドナーの方は肥満がひどいと提供後に腎機能をはじめ健康状態に悪影響が出ることがあります。肥満はドナーであるか否かにかかわらず健康に悪影響があり、望ましくないのは周知のとおりです。ドナーの方は原則BMI30未満が望ましいのですが、肥満にも色々と個人差があり、肥満がある場合は外来でよく相談した上で提供が可能になる方法を考えましょう。

数年前にがんになり、手術しました。腎移植は受けられますか?

過去にがんを患っていても、完治していると判断された場合は適応となる可能性があります。がんの種類にもよりますが、一般的に2~5年間再発がなければ、腎移植が可能になる場合があります。一概には答えられないことですので、受診時にご相談いただければ、明確にお答えすることができます。

親子間で腎移植はできますか?

可能です。
親から子への腎提供、祖父母からお孫さんへの腎提供などのケースがあります。

夫婦間で腎移植はできますか?

可能です。
免疫抑制療法の進歩とともに夫婦間の移植も増えています。

血液型が違っても腎移植はできますか?

可能です。
現在では、ドナーとレシピエントの血液型がどのような組み合わせでも腎移植は可能です。
免疫抑制療法の進歩によって、血液型適合移植と血液型不適合移植の長期予後(患者さんの生存率や移植腎の生着率)に差はなくなりました。

検査でドナーと適合しない場合、腎移植はできませんか?

当院では、基本的に「ドナーと適合しないから腎移植ができない」ということはありませんので、もし他院で「ドナーと適合しないから腎移植ができない」と言われても、大抵は大丈夫ですので、諦めずに当院を受診し、相談してください。

ドナーの可能性と安全性

ドナー候補の母が数年前にがんで手術をしました。ドナーになれるのでしょうか?

レシピエントの方と同様に、がんの種類にもよりますが、2~5年間再発がなければ、腎提供が可能になる場合があります。一概には答えられないことですので、受診時にご相談いただければ、明確にお答えすることができます。

献腎ドナーと生体ドナーの腎臓に違いはありますか?

生体ドナーの方の腎臓は取り出してからすぐに移植しますので、非常に腎臓の質がいい状態で移植ができます。一方で、献腎ドナーの場合は、亡くなられるという過程を経ていますので、それなりのダメージを受けています。そのため、腎移植全体の成績で比べると、10年後の生着率は生体腎移植で9割前後ですが、献腎移植では8割前後となっており、10%ぐらいの差があります。ただ、実際には10年経って全体で10%程度の差しかないので、大きな差があるとは言えません。

ドナーは腎臓を提供したら寿命が短くなりますか?

腎提供後、ドナーの方の寿命が短くなるということは一般的にはありません。また、手術においては、当院では非常に侵襲の少ない腎摘出方法を行っていますので、術後のさまざまな問題が起こる可能性が非常に低く、創も目立ちにくいです。
当院では術後、ドナーの方にも1年に1回は定期検査を受けていただいています。

腎臓を摘出した後の生体ドナーの腎臓があったスペースはどうなるのでしょうか?

胃や腸などがおりて、腎臓のあったスペースは無くなります。

入院・手術

腎移植の手術時間や入院期間について教えてください。

腎移植を受ける方(レシピエント)は、その方の状況にもよりますが、大体手術の1週間ぐらい前に入院していただきます。
手術時間は通常は3時間前後です。ただ、古い腎臓を取り出すとか、嚢胞腎を取り出すとかが加わると少し長くなり、5時間前後がかかることもあります。手術後は、数日間はICU に入っていただきます。
その後、腎臓内科の病棟に戻り、大体2 週間前後で退院となります。

腎提供者(生体ドナー)は、術前日か前々日に入院していただき、すべて腹腔鏡下にて手術を行い、術後3~4日以内に退院となります。

移植後の生活

移植した腎臓はどのくらい持ちますか?

10年経った時点で9割前後の方の腎臓はきちんと機能しています。20年で大体8割~7割の成績が出せることは分かっています。
腎臓が機能しなくなる理由の多くは、免疫抑制薬の服用を忘れたり、止めたりすることです。しっかりと服薬をして、生活習慣病に気をつけることが大切です。

腎移植後は食事制限がありますか?

基本的にはありません。楽しく食事をしてください。ただ、食べ過ぎ飲み過ぎには注意が必要です。

腎移植後は妊娠、出産できますか?

可能です。
ただ、移植後1年ぐらいは体の状態が落ちついていませんので、1~2年くらい様子を見て、腎機能が安定していることや血圧が安定していることなど、いくつかの条件をクリアすれば妊娠するための準備に入ることができます。
移植後は毎日、免疫抑制薬を服用する必要があり、免疫抑制薬の中には胎児に影響を及ぼす可能性があるものもあります。そのため、妊娠・出産のためには、多くの場合で、胎児に影響を与える可能性が低いと考えられる免疫抑制薬への変更が必要になります。免疫抑制薬以外に服用している薬剤がある場合も同様に、必要に応じて薬剤の種類を変更します。
薬剤を変更した後も体の状態が安定していることが確認できれば、妊娠可能という判断をします。
許可が出るまでは、必ず避妊することが重要です。

腎移植後に運動はできますか?

基本的に運動制限はありません。ただし、トライアスロンなどの極限スポーツなど、かなり負担がかかることは控えていただきたいと思います。それ以外の運動は、むしろ推奨します。

腎移植後、温泉や公共浴場など入れるようになりますか?

全く問題ありません。
レジオネラ菌の検査をきちんと行っている施設を選ぶようにしてください。

腎移植後はどのくらいの頻度で通院する必要がありますか?

腎移植を受けた方(レシピエント)の通院頻度は、初めの1カ月は週1回、2~3カ月目は2週間に1回、それ以降は月1回が目安です。
腎提供者(生体ドナー)の方は、1年に1回、定期検査を受けていただいています。