腎移植とは

②腎移植とは

1. 腎移植の種類

腎移植とは、どのような治療法ですか?

透析療法と比較した場合、大きく分けて3つの利点があります。まずは、透析療法に比べて明らかに長生きできるということです。腎移植後の10年生存率は90%前後であり、透析の場合の50%前後に比べてほぼ2倍近い生存率となります。
次に術後の生活の質=QOL(Quality of Life)の改善が見込まれることです。食事制限や水分制限から解放され、スポーツや旅行を楽しむことができます。仕事に就く、出産して子供をもつなどQOLが大きくが改善されます。通院が1~3カ月に1回程度となることから、社会復帰の可能性も大いに高まります。
3番目の重要な利点として医療費があります。透析療法に比べて腎移植後は医療費が大幅に削減されます。日本では医療費の公的補助があり、実質的には問題ないのですが、国としての医療費の削減には大きな意味があります。

腎移植には、どのような種類がありますか?

腎移植には、大きく分けて下記の2つがあります。

生体腎移植 親・兄弟姉妹・祖父母などの6親等以内の血族、または配偶者と3親等以内の姻族から、2つの腎臓のうちの1つの提供を受ける移植。
献腎移植 亡くなられた方から腎臓を提供していただく移植。献腎移植には、心臓死からの移植と脳死からの移植があります。

腎臓を提供する人をドナー、腎移植を受ける人をレシピエントといいます。

生体腎移植と献腎移植のメリット・デメリットは何ですか?

生体腎移植

【メリット】

  • 健康なドナーからの腎提供のため、手術直後から移植腎の状態がよく、生着率は献腎移植に比べて良好。
  • 移植手術の日程を予め決めることができるため、十分な準備をした上で手術を行うことができる。そのため、手術前に何らかの準備が必要な移植(血液型不適合移植など)が可能。

【デメリット】

  • 健康なドナーに対しての腎摘出手術が必要。
  • ドナーにも術前の検査及び術後の定期検診が必要。

献腎移植

【メリット】

  • ドナーに負担がかからない。

【デメリット】

  • 献腎移植希望登録を行ってから移植を受けるまでの平均待機期間が、約14年7カ月(2022年12月時点)と長期におよび、90%以上の多くの患者さんは腎移植を受けられないまま長期間待機しているのが現状。
  • 待機期間が長いため、その間に透析合併症が進行する場合がある。
  • ドナーの方の臓器提供前の状態の影響で、移植直後は尿が出ないこともあり、しばらくの間は透析治療が必要になる場合もある。
  • 短期、長期の移植腎生着率が、生体腎移植と比較して多少劣る。

2. 腎移植手術について

腎臓は、どこに移植されるのですか?

腎臓は、通常は右あるいは左の下腹部に移植します。
ドナーから提供された腎臓の血管(動脈と静脈)をレシピエントの足に行く血管にそれぞれつなぎ、尿管をレシピエントの膀胱へつなぎます。また、レシピエント自身の腎臓は、ほとんどの場合は摘出せずにそのまま残します。

ドナーの手術は、どのように行われるのですか?

腹腔鏡による腎臓の摘出手術が行われます。
腹腔鏡を用いた手術の場合、傷は腎臓を摘出するのに必要な5cm程度で小さいため、手術後の痛みが少なく、術後の回復が早いことがメリットです。
一概にはいえませんが、家事や事務仕事であれば、術後1~2週間程度で仕事に復帰することも可能です。

3. 腎移植の件数と成績

日本では、1年間にどのくらいの数の腎移植が行われていますか?

2021年には、生体腎移植と献腎移植の合計で1,733件の腎移植が行われています。

移植した腎臓は、どのくらいもちますか?

腎移植の成績は一般的に生着率で表します。
生着率とは、移植してからある一定期間機能している移植腎の割合のことです。
近年の新しい免疫抑制薬の登場や、組織適合性検査方法の進歩により、腎移植の成績は年々向上しています。
2010~2020年においては、生体腎移植の1年生着率が98.7%、5年生着率が93.1%、献腎移植の1年生着率が95.9%、5年生着率が87.8%となっています。