腎移植とは

②移植腎を長くもたせるために重要なこと

1. 服薬管理

免疫抑制薬を飲み忘れたらどうなりますか?

免疫抑制薬は基本的には移植腎が機能している限り、毎日、決められた時間に飲むのが原則です。しかし、人間である限り忘れるということはあります。週2、3回などの頻回の飲み忘れは確実に拒絶反応を引き起こし、移植腎が長持ちしなくなります。通常、免疫抑制薬は2、3種類内服していることが多いのですが、どれか1つを忘れてもよくありません。
飲み忘れの対策としては、携帯などを利用して服薬時間を知らせたりするような工夫が必要です。また、特に若い人で夜、飲酒して飲み忘れることがありますが、このようなときは多少時間がずれますが、夕食前に内服しておくといいでしょう。最近では朝1回のみの服用でよい薬も多くなっていますので、それらを利用することもいいでしょう。

2. 生活習慣病対策

移植後も糖尿病治療薬の服用は必要なのでしょうか?

糖尿病が原因で腎不全になる人が多くなっています。このような場合は腎移植後も移植前と同じように糖尿病の管理が必要です。
腎移植後に初めて糖尿病を発症する人もいます。頻度的には2~5%前後で決して多くはありませんが、注意が必要です。もし発症しても免疫抑制薬の内服量が少なくなるとともに改善する人も少なくありません。
発症しにくくする工夫としては、食べ過ぎに注意すること、適度な運動でエネルギー消費をすることです。特に体重の管理に注意して、肥満にならないようにしましょう。また、どうしても血糖が高い場合は糖尿病の内服治療、ないしはインスリン療法が必要となりますが、インスリンの使用を必要とする頻度はかなり少なく、1~3%程度であると考えられています。

肥満は移植腎にどのような影響があるのでしょうか?

肥満は移植後に限らず非常によくありません。肥満は腎機能の悪化をもたらしますし、高血圧、糖尿病などの強い誘因となります。肥満とならないように食事に注意し、適度な運動を心がけましょう。この「肥満を防ぐ」ということが一番重要なポイントと言って差し支えないでしょう。

移植後の高血圧にはどのように対応するのでしょうか?

高血圧は適切に管理することが必要です。高血圧を指摘されたら、まずチェックすべきは体重です。肥満であれば当然血圧は上昇します。また、ストレスも大きな血圧上昇の誘因となりますので、ストレスについても気を付ける必要があります。
時に移植腎の腎動脈の狭窄が発生すると血圧が上昇することがあります。超音波検査でこのような腎動脈の狭窄は比較的容易に診断可能です。
また、まれですが、副腎といわれるホルモン産生臓器に腫瘍が発生して、血圧が上昇することもあります。これも血液検査、CT、MRIなどの検査により診断可能です。
一方、これらの明らかな原因が認められない場合は、原因不明ということで、「本態性高血圧」となり、服薬によるコントロールが必要となります。服薬する薬剤についての詳細はここでは述べませんが、必ず主治医と相談して内服をしてください。

喫煙してもいいのでしょうか?

どのような理由があっても、よくありません。
発がん、肺疾患などの誘因となりますし、移植腎の寿命を短くします。腎機能悪化の重要なリスクファクターとしてよく知られています。

3. 定期通院・定期検診

移植後はどのくらいの頻度で外来通院するのでしょうか?また外来ではどのような検査をするのでしょうか?

腎移植後、早い場合は2週間、多くの場合は3~4週間で退院します。退院後3カ月は、感染症、拒絶反応などの合併症が多い時期です。この時期は通常週1~2回の通院が必要となります。3カ月を過ぎるとこのような合併症が起こる可能性はかなり低くなります。
一般的には移植後3~6カ月ごろまでは2週間に1回程度の外来通院をする移植施設が多いと思います。移植後半年過ぎると通常は月1回の通院となります。仕事などで毎月通院できないという場合を除き、通常は月1回の通院をお勧めしています。このような通院により、細かい管理ができ、様々な異常が早期に発見されやすくなります。

外来での検査は主に血液検査、尿検査となります。通常は、血液(白血球、赤血球、血小板)の精査、腎機能、肝機能、炎症反応、免疫抑制薬の血中濃度、サイトメガロウイルスの検査などが行われます。これに加えてBKウイルス、EBウイルス、移植腎および元の腎臓の超音波検査を行う施設もあります。また、抗ドナー抗体(PRA検査)の検査も定期的に行うことを勧めています。

移植後はがんになりやすいのでしょうか?検診はいつから、どうやって受けるのでしょうか?

腎移植後の発がんは多いと考えられていますが、透析患者さんと比較すると必ずしも多いわけではありません。しかし、一般の健常者に比べるとがんの発生頻度はやや高くなっているのは確かです。
40歳以上の方、腎移植後5年以上経過した場合などにはできるだけ検診を受けることをお勧めしています。腎移植外来は腎機能を診ていますが、がん検診をしているわけではありません。上記の条件にあてはまる人は必ず検診を受けてください。人間ドック、脳ドックなどがよいでしょう。

腎生検は受ける必要があるのでしょうか?またどのタイミングで受けるべきなのでしょうか?

絶対ではありませんが、基本的には腎生検は受けたほうがよいでしょう。移植腎機能の問題が生じた場合や蛋白尿が出るときなどは、移植腎生検が強く勧められます。
また、移植前からドナーに対する抗体があるなど移植後に拒絶反応の発生リスクが大きいと考えられる場合は、定期的な移植腎生検が強く勧められます。
検査値で大きな問題がなくても、定期的な腎生検をお勧めします。すなわち、クレアチニンの値、蛋白尿などだけでは必ずしも移植腎の異常を発見できないからです。通常移植後2週前後、半年前後(できれば)、1年前後に移植腎生検をお勧めしています。1年目で大きな異常がない場合は、3~5年目に1回の生検をお勧めしています。それ以上の術後に関しては、現時点では移植腎生検を行う時期が決められているわけではありません。

4. 感染予防

ST合剤は内服した方がいいのでしょうか?

腎移植後のニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)の予防にST合剤の内服は非常に有効です。ST合剤の内服により、ほぼ予防可能と考えても差し支えないでしょう。
以前は術後6カ月までは、ST合剤内服を必須にしており、6カ月以降は中止していました。しかし、近年、免疫抑制薬が強力になっていることから、移植後5年以上のかなりの時間が経ってもニューモシスチス肺炎を発症する人が見られるため、現時点では長期に渡る内服をお勧めしています。通常は、週3回、1回1錠を原則としています(週に3錠となります)。
また、ST合剤内服で移植腎機能が悪化すると考えている人もいますが、この程度の量ではまったく問題はありません。

インフルエンザワクチンは接種していいのでしょうか?

接種するべきです。
ただ、ワクチンを接種しているからといって感染しないわけではありません。発熱などインフルエンザを疑うときはためらわずに病院に行き検査、投薬を受けてください。

ほかのワクチンは接種する必要があるのでしょうか?

必要なワクチン類は接種するべきです。ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがありますが、通常、不活化ワクチンは問題ないものの生ワクチンの接種は、感染症が発症してしまう可能性があることから勧められていません。
肺炎球菌ワクチンはできれば5年に1回ぐらいの接種が勧められます。
水痘なども一度かかった場合は通常2回かかることはありませんが、免疫抑制下では再感染することもあります。したがって、ワクチンを接種した感染症、一度罹り、通常2回は罹らないといわれているような感染症でも感染することがあるので、注意が必要です。よくわからないときは主治医に相談してください。
また、子供が感染症にかかった場合は、再度感染することもあり得るため、主治医に相談することが必要です。特に、水痘は重症化することもあるため、自分の子供が感染した時は予防的な薬剤投与を受けるなど、厳重な注意が必要です。

5. 移植腎の生着期間

移植腎はどのくらいもつのでしょうか?

これは一言では答えられない質問ですが、現在、腎移植を受けた方の中には移植後40年以上生着して元気にしておられる方もいらっしゃいます。
長持ちさせるためのコツは、きちんとした服薬と体重管理、外来でのきちんとした管理につきます。
医学は日進月歩です。通院しているうちにそれまで不可能であった治療が可能になったり新しい薬剤が利用できるようになったりします。