③移植後に起きることがある症状と対策
1. 注意が必要な症状と対策
発熱
38℃以上の発熱であれば原則受診するようにしてください。
夜間であれば当直医に連絡してください。発熱は様々な原因で起こります。
原因を特定することが大切であり、場合によっては入院加療の必要がある可能性も十分あります。
尿量の減少
1日400mL以下の尿量を乏尿といい、このような状況は移植腎によくありません。原因として、水分を摂取しているにもかかわらず尿が出ない場合と、当初から水分を摂取していない場合の2つに分けられます。
前者は腎機能低下、心機能低下、発熱、下痢などが考えられ、後者は大量発汗、胃腸障害から飲水できないことによる脱水などが主な原因です。いずれの場合も移植腎に良い影響を与えませんのですぐに受診してもらう必要があります。
移植腎が硬い、痛い
一般的には拒絶反応の兆候です。すぐに受診する必要があります。
しかしながら、急性腎盂腎炎でも似たような症状が起きます。いずれの場合も受診して血液検査、エコーを早急に行って診断を確定させます。
2. その他の症状と対策
顔のにきび
副腎皮質ステロイド投与が影響している可能性が高いです。
副腎皮質ステロイドは減量していきますが、それでも改善が認められない場合は皮膚科の専門医に相談することになります。
皮膚のただれ
重篤な薬疹の場合は可能性のある薬を中止して、すぐに皮膚科の専門医を受診する必要があります。ヘルペスウイルス感染のような水疱が融合して皮膚がただれたように見える場合もあります。治療薬がありますが、早期に服用する必要がありますので、皮疹が出た場合は早めに受診してください。
下痢、嘔吐
感染性腸炎(細菌性、ウイルス性)、免疫抑制薬の副作用などが考えられます。重篤な腸炎の場合は脱水になる可能性もあり、十分な点滴が必要となります。
頭痛
原因が多岐にわたることから可能なかぎり早めに受診していただき、原因を特定することが必要です。対症療法で経過観察可能な頭痛が一般的ですが、脳内疾患や緑内障、異常高血圧症などに起因する頭痛は速やかな診断・治療が必要となるからです。
脱毛
一部の免疫抑制薬の副作用によるところが多いと考えられています。原因と思われる免疫抑制薬を減量することもありますが、あまり減量にこだわって拒絶反応を発症することは避けなければなりません。大部分は徐々に脱毛の程度が改善されていきます。男性型脱毛症で内服するフィナステリドは免疫抑制薬の血中濃度に影響することから内服に際しては注意が必要となります。